国交省プロジェクトに応募。3D計測を活用した新しい出来形管理でA評価を獲得

Customer Case Study - 事例

Kanatsugiken

島根県松江市の建設会社・カナツ技建工業株式会社(以下、カナツ技建工業)は、2018年8月、国土交通省(以下、国交省)の「建設現場の生産性を飛躍的に向上するための革新的技術の導入・活用に関するプロジェクト」に 4 社コンソーシアムを組織して応募。橋台・橋脚を3D計測し、取得した点群データを出来形管理に活用する革新的な技術導入に挑戦した。その取り組みと労働生産性向上の成果は国交省から高く評価され、2019 年4月、最上位ランクの「A」評価を獲得した。

革新的技術導入による生産性の高い出来形管理にチャレンジ

国土交通省は、建設現場の生産性向上を目指す i-Construction、および統合イノベーション戦略の一環として、 2018年8月、「建設現場の生産性を飛躍的に向上するための革新的技術の導入・活用に関するプロジェクト」を公募した。
カナツ技建工業は、福井コンピュータ株式会社(以下、福井コンピュータ)、ライカジオシステムズ株式会社(以下、ライカジオシステムズ)、株式会社山陽測器(以下、山陽測器)と共に4社コンソーシアムを組んでこのプロジェクトに応募し、「データを活用して土木工事における施工の生産性の向上を図る技術」の部門で選定・採用された。
4社コンソーシアムの趣旨は、橋台・橋脚のコンクリート構造物を対象に3D計測を行い、取得した点群データを出来形管理に利用して、建設現場の生産性を飛躍的に向上させるというもの。また、取得した点群データと、3D設計データ(CIM)との座標値の較差による、新たな出来形管理の方法を試行・提言した。
カナツ技建工業は、3D計測と従来のトータルステーションによる測量の両方が可能な器械として、ライカジオシステムズの「Leica Nova MS60 マルチステーション」を採用。3D設計データおよび取得した点群データの処理・解析には、福井コンピュータの土木施工業向けCAD「EXTREND 武 蔵 」と3D点群処 理システム「TREND-POINT」を用いた。また、ライカジオシステムズ製品の販売代理店である山陽測器は、カナツ技建工業の測定現場で Nova MS60 の操作を支援し、製品の情報共有に努めた。
カナツ技建工業 土木部 情報技術グループチームリーダーの木村善信氏は語る。「現状の出来形管理は、数多くの計測と差異
分析をすべて手作業で行い、大変な手間と時間がかかっています。もともと2018年6月に Nova MS60 を当社で購入したのは、こうした作業を省力化することが目的でした。導入してすぐに国交省の公募を知り、4社で知恵を絞ったところ、点と面での構造物管理、そして、生産性の高い出来形管理の具体的な道筋が構想できたので、応募した次第です」。
2018年12月から翌2019年3月にかけて、5回の現場計測とデータ解析を行い、その成果を踏まえての提言をまとめて、国交省へ提出。 2019年4月、国交省は本プロジェクト全体の評価結果を公表したが、本コンソーシアムは、最上位の「A」(目標は達成され、十分な研究成果があった)と判定された。

計測作業工数半減! 橋台・橋脚の場所打ち杭管理で大きな成果

試行したのは、山陰道の「静間仁摩道路大国高架橋外下部工事」における、橋台2基、橋脚2基の出来形計測・出来形管理である。以下、(1)場所打ち杭、(2)フーチング、(3)躯体に分けて成果をレポートする。

(1)場所打ち杭は、橋台・橋脚の最も下部に位置し、現場で穴を掘り、組んだ鉄筋にコンクリートを打設して作る。本プロジェクトでは、橋台・橋脚1 本につきそれぞれ8~15本、合計44本の場所打ち杭の出来形計測を行った。「従来方法での場所打ち杭の出来形計測では、杭天端の基準高を測定する際は、杭より突き出た鉄筋を脚立などを使用して乗り越え、中心部でスタッフを立てます。杭径については、橋軸方向、橋軸直角方向の2方向を2人1組で測定します。こうした作業を杭の本数分、延々と繰り返していくわけです。また、出来形写真の撮影にも別途1名必要となります」と木村氏は語る。
Nova MS60 を使えば、鉄筋の外から計測できる。中心点となる杭芯や杭径も、わざわざ2人1組の巻き尺で計測する必要がなく、後からのデータ解析で正確に割り出せる。

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計測作業にかかる工数は、従来技術では83.3人時(人数×作業時間、以下同)であるのに対して、試行技術では37.27人時と、半分以下に短縮できた。カナツ技建工業はさらに点群計測方法を何通りも試して、最も効率的なデータ取得方法を探った。その結果、今回の構造物基礎部分の面積程度であれば、点群密度として5㎝に1点を4方向から計測するのが、測定作業が効率的であり、出来形管理にも支障がないという知見を得た。
「試行技術は、場所打ち杭の管理で最も大きな効果を実証できました。また、杭天端は平滑面ではないため、杭心1点の高さ数値だけでは管理情報として意味をなさないと思い、杭天端全体を面的評価しました。 ICT土工と同様の対応です」と木村氏。杭の天端全体の高精度な出来形管理を効率よく行えるのは、試行技術の大きなメリットである。加えて、 Nova MS60 で取得したデータを点群処理システムに取り込んで出来形計測を行うため、出来形管理写真を別途に撮影する必要がない。当然、写真整理にかかる後作業工数も省略できた。

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試行技術によって、場所打ち杭の計測作業工数は半分以下に削減された。

(2)フーチング
フーチングは、場所打ち杭群の上にのせる鉄筋コンクリートの土台である。
今回は、組んである足場が障害物となったために、点群計測が不可能な箇所やトータルステーションで視認できない箇所が発生し、頻繁に器械を移動して測定しなければならず、予想以上に計測時間がかかった。工数は、従来技術11人時に対して、試行技術8.5人時である。

Footing On Site
フーチングは、衝撃緩和機能を持たせた鉄筋コンクリート土台。面取りされているため、隅角点の正確な把握が課題となる。

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(3)躯体
フーチングの上にのせて、橋げたの上部構造を支えるのが躯体である。
躯体についても、足場が隅角点取得の障害となり、頻繁な器械移動が発生した。橋座、パラペット上部、翼壁上部など、足場がスキャン作業の効率低下を招く箇所も多数あった。
工数は、従来技術40人時に対して、試行技術30.9人時である。

 

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躯体は、高所や狭小な場所での計測が必要になるため、3D点群データを活用した面的評価の有効活用が期待される。

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「フーチングと躯体は、工数削減効果が2割程度にとどまっています。しかし、測定箇所が多ければ、2割減でもかなりな時間短縮になります。また、3D計測が通常の作業プロセスとして定着すれば、計測が効率よく行えるように足場の構築・撤廃の手順を現場が工夫しますから、工数はもっと削減されるはずです」と木村氏は指摘する。
フーチングと躯体においては、隅角点管理が容易になることも大きな効果だ。コンクリート構造物は縁が直角だと破損しやすいため、面取り加工してある。従来技術では、コーナー専用定規をあて、直角の縁を仮に復元する形で数値計測している。ところが Nova MS60 であれば、トータルステーションとしての機能で、隅角点3D座標をピンポイントで実測できる。さまざまな試行錯誤を経て、本コンソーシアムは、「点群データと隅角点3D座標を現場で取得し、3D設計データと対比させることで、革新的な出来形管理が可能になる」という最終結論に至った。
「UAV(ドローン)を飛ばさなくても、点群計測とトータルステーションによる計測で必要な維持管理データは取得できます。UAVよりも使用できる条件範囲が広く、UAVよりも高精度だと思います」と木村氏は補足する。

点群データ活用で、生産性向上、高精度化、安全性向上

「点群データを活用しての新しい出来形管理」には、生産性向上、高精度化、安全性向上など、多様な効果が期待できる。

  • 出来形計測は、新人が1人で行うことも可能な負荷の少ない作業となる。
  • データさえ取得すれば、任意の座標間の寸法を測ったり、任意の位置で断面を作ることも可能で、中心点、厚さ、幅、長さ等、出来形管理項目の多くがデータ解析で完了する。
  • 出来形管理写真の撮影・整理が不要になる。3Dデータで形状が細部まで確認できるため、2D出来形図の作成も不要、または簡素化できる。
  • 隅角点の計測座標と3D設計データの同点の座標値の較差からXYZ方向の偏差を求めるといった、これまでにない解析を行って、維持管理の精度を高めることも可能。

「2020年以降の5G時代になれば、 Nova MS60 の取得データを現場とオフィスで同時に見ながら、発注者、施主、上司などが、計測現場に遠隔で立ち会いをすることもあたりまえになるでしょう」と木村氏は期待する。
重要なポイントは、工事が進み、杭もフーチングも土の中に隠れて目視できなくなったときに、その見えないものの正確な状況を、将来にわたって正確に管理できることだ。工事途中の過程の記録を詳しくとっておくことで、安全性や信頼性が高まり、大きな事故を減らす効果も期待できる。さらに、取得データを CIMに取り込んで加工したり、VR(仮想現実)、AR(拡張現実)、MR(複合現実)技術やウエアラブル端末を組み合わせて施工作業を変えるなど、将来の応用シーンが大きく広がる。

3D CIM Data
構造物全体の出来形点群データと3D設計データ(CIM)を融合した画像。将来の構造物維持管理データは、このような形になるのではないだろうか。

点群計測したその場で、設計データを重ねて見られる

3D点群データの取得と活用」を出来形管理の標準形にするためには、乗り越えなければならない課題もいくつかある。ひとつは、国の基準である出来形管理の共通仕様書が3Dデータ活用形態へと変わること。また、カナツ技建工業のように、施工会社でも、3D設計データを編集・加工できる技術者を社内に育成しておくことが大切になる。
トータルステーションによる計測と点群計測を同時に行える、
Nova MS60 のような計測機器も不可欠だ。
Nova MS60 は、点群計測をしたその場で、3D設計データを重ねてリアルタイムに見られることが最大の魅力です。『さあ、設計データを読み込んで比べましょう』ではなく、Nova MS60 の画面を見れば較差がすぐわかるので、作業効率がまるで違います。規格値の範囲に入っていなければ、測定位置か何かを間違っているということ。3D設計データと同時にチェックすることで、ミスのない出来形管理ができるのです」と木村氏。基本操作がトータルステーションと同じで親しみやすく誰でもすぐに扱えること、モータードライブの性能が高く回転/反転がすばやいこと、レーザースキャンの速度も高いことなどの特長も、木村氏は列挙した。
カナツ技建工業は、コーポレートスローガン「創ります
! 感動・笑顔・人・未来」を大切にしており、今回の試行でも「技術を現場で使いこなす」をテーマに掲げて、技術者と施工現場が一体になって革新に取り組んだ。「今回の試行は、『こういうやり方もある』という提言を実践したにすぎません。i-Construction 深化から i-Construction 貫徹へと時代の要請が移り変わるなかで、今回の試行が『小さくとも大きな一歩』となるように、より柔軟な発想と創造力をもって、建設現場の生産性向上、魅力ある職場づくりへとつなげていきます」と木村氏は熱を込めて語った。

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